毎日髪を結んでいる方へ|引っぱる負担と生え際をいたわる結び方

「家事をしているとき、仕事のとき、気がつくといつも髪をひとつに結んでいる」——40〜60代の女性から、こうしたお話をよくうかがいます。顔まわりがすっきりして家事もしやすく、まとまりにくくなってきた髪もひとまとめにできるので、毎日の習慣として続いている方は少なくありません。
ただ、同じ位置で、同じ強さで結ぶ日が積み重なると、髪と頭皮には少しずつ負担がかかっていきます。生え際の髪が細く見えてきた、分け目が広がって見える、結んでいたあたりで髪が短く切れている——そうした変化は、年齢による髪質の変わり目だけが理由とは限りません。この記事では、髪を結ぶ習慣と上手につき合うために、結ぶ位置や強さの見直し方と、髪を休ませるという考え方を、美容師の視点で整理してお伝えします。
結ぶ位置を毎日ずらし、乾いた髪を休ませる
はじめにお伝えしたいのは、結ぶこと自体をやめる必要はない、ということです。押さえておきたいのは、同じ位置で強く結び続けないことと、一日のどこかで髪をほどいて休ませる時間をつくることの2つです。この2つを意識するだけで、髪と頭皮の一点に力が集まるのを和らげやすくなります。
髪を引っぱる力は、一回だけならごくわずかなものです。けれども同じ場所に毎日、しかも長い時間かかり続けると、その一点にだけ負担が積み上がっていきます。結び目の位置を数センチ上げ下げする、分け目を左右で変える、家にいる間だけはほどいておく。どれも今日から始められることばかりで、道具も費用もいりません。
「そんな細かいことで変わるのだろうか」と思われるかもしれません。けれども髪と頭皮にかかる力は、強さよりも、同じ場所にかかり続けた時間の長さで効いてくる性質があります。だからこそ、力そのものを我慢して減らすより、かかる場所を散らすほうが現実的なのです。今日から結び方をすべて変える必要はありません。まずは結ぶ位置を意識してみるところから始めてみてください。
もうひとつ忘れずにいたいのが、濡れた髪のまま結ばないことです。濡れた髪はやわらかくふくらんだ状態で、引っぱる力にも、ゴムとのこすれにもとても弱くなっています。入浴後はしっかり乾かしてから結ぶ、朝は髪が乾いてからまとめる。このひと手間だけでも、結び目のあたりで髪が切れるのを防ぎやすくなります。基本の考え方を下の図にまとめました。

なぜ結ぶ習慣が髪と頭皮の負担になりやすいのか
髪をひとつにまとめると、束ねた場所を起点にして、頭全体の髪が同じ方向へ引っぱられます。とくに力がかかりやすいのが、生え際やこめかみ、耳のうしろといった、束の端にあたる部分です。ここは髪が細く短いことが多く、引っぱられる力に対して踏ん張りがききにくい場所でもあります。
この力は、かかっている最中はほとんど自覚できません。夕方になって結び目をほどいたときに、頭皮がじんとする、髪をおろすと表面がへこんだままになっている——そうした感覚があれば、日中それだけの力が続いていたということです。痛みを感じるほどきつく結んでいる場合は、その日のうちにゆるめてあげてください。
もうひとつは、こすれの問題です。ゴムが当たっている一本のラインには、結んだりほどいたりするたびに摩擦が集中します。40〜60代の髪は水分や油分が減ってしなやかさが失われやすく、若い頃と同じ結び方でも受けるダメージが大きく出ることがあります。結び目の高さでだけ髪が短く切れて、アホ毛のように立ち上がって見えるのは、この摩擦が重なった結果であることが少なくありません。
季節によっても、結ぶ強さや位置は変わります。汗をかく時期は、髪が首やほおに張りつくのを避けたくて、いつもより高い位置できつくまとめがちです。反対に空気が乾く時期には、広がる髪を抑えようとして結び直す回数が増えます。どちらも一時的なことのように思えますが、その状態が数か月続けば、毎日の習慣と変わらない負担が積み重なっていきます。髪の量が多い方や長さのある方は、束ねたときの髪そのものの重さも引っぱる力として加わるため、同じ結び方でも受ける力は大きくなります。今の季節に自分がどんな位置で、どのくらいの強さで結んでいるか、いちど振り返ってみると気づくことがあるはずです。
位置・強さ・道具|結び方の見直しどころ
まず見直したいのが、結ぶ位置です。毎日きっちり同じ場所で結んでいる方は、日によって数センチずらすことを意識してみてください。高い位置でのポニーテールは顔まわりが引き上がって見える反面、生え際にかかる力が強くなります。低めの位置でゆるく束ねる日をはさむだけでも、負担のかかる場所を散らすことができます。あわせて分け目も、右、左、ジグザグと変えていくと、同じラインばかりが引っぱられるのを避けられます。
次に、強さです。目安になるのは、結んだあとに結び目の根元へ指が一本すっと入るかどうかです。入らないほど締まっていれば、少しきつすぎるサインと考えてよいでしょう。髪が落ちてくるのが気になる方は、ゴムをきつくするのではなく、まとめる位置を低くする、ヘアピンやクリップで支えを足すという方向で調整すると、力を分散しやすくなります。
道具も、見直す価値のあるところです。細くて硬いゴムは、一点に力とこすれが集中しやすくなります。太めで表面がなめらかなもの、布で包まれたもの、リング状でしめつけの少ないものなど、髪に当たる面が広い道具のほうが負担を分けやすくなります。金具のついたゴムは、髪をはさんで切ってしまうことがあるので避けたほうが無難です。長さのある方は、ゴムで結ばずクリップでざっくり留めるという選択肢も、家の中では十分実用的です。
見落とされがちなのが、ゴムの外し方です。急いでいるときに髪から引き抜くように外すと、そのたびに何本もの髪が引っぱられ、絡まったまま途中で切れてしまいます。結び目を指で少しゆるめてから、ゴムを広げるようにして抜くと、引っかかりをぐっと減らせます。一日に何度も結び直す方ほど、この外し方の差は積み重なっていきます。また、結ぶ前に目の粗いコームで軽くとかしておくと、束ねたときに髪が均等に集まり、一部だけが強く引っぱられるのを防ぎやすくなります。絡まったまま無理に束ねると、その絡まりの位置に力が集まってしまうためです。
生え際・分け目・毛先に出るサインの見方
変化はいくつかの場所に、それぞれ違う形で現れます。生え際やこめかみでは、産毛のような細く短い髪が目立つようになったり、髪の立ち上がりが弱くなって額が広く見えたりすることがあります。分け目では、いつも同じラインで分けているうちに地肌が透けて見えやすくなり、白髪が一列に並んで目立つという形で気づく方もいらっしゃいます。
結び目の高さに出るサインは、もう少しわかりやすいものです。おろしたときにその高さだけ短い髪が飛び出している、あるいは指を通すとその位置でひっかかる。これは切れ毛が集中している合図で、結ぶ位置とゴムを見直すきっかけになります。
ここで大切なのは、こうしたサインを見て自分で原因を決めつけないことです。40〜60代は、更年期をはさんで髪質そのものが変わる時期でもあり、白髪染めを重ねてきた履歴や、頭皮の乾燥も重なります。結び方だけが理由とは限りませんし、逆に結び方を整えるだけで気になりにくくなる方もいらっしゃいます。判断に迷うときは、どの場所がいつ頃から気になり始めたのかを整理して、美容師に見てもらってください。頭皮に赤みやかゆみが続くなど、髪型の工夫では追いつかない状態のときは、医療機関に相談することも選択肢に入れておくと安心です。
ご自宅でできる確認の方法もあります。月に一度、明るい場所で分け目とつむじのあたりを写真に撮っておくと、毎日見ているだけでは気づきにくい変化を、後から並べて見比べられます。鏡では見えにくい後頭部は、ご家族に撮ってもらうか、合わせ鏡で確かめておくとよいでしょう。撮るときは、同じ時間帯、同じ髪の乾き具合にそろえておくと、光の当たり方や湿気に惑わされずに比べられます。変化がなければそれで安心材料になりますし、気になる点が出てきたときには、その写真をそのまま相談の材料として持ってきていただけます。言葉で説明しにくい変化ほど、写真があると話が早くなります。
髪をまとめたい日を心地よく過ごす工夫
とはいえ、暑い日や動きの多い日に髪をおろして過ごすのは現実的ではありません。ここは我慢の話ではなく、まとめ方の引き出しを増やす話として考えてみてください。ひとつのやり方で一日を通すのではなく、場面ごとに変えられる選択肢を2つ3つ持っておくと、無理なく続けられます。外出する日は、低めの位置でゆるく束ねると、顔まわりが引っぱられにくく、後ろ姿も落ち着いて見えます。家事の最中はクリップでざっくり留めておけば、必要なときだけ髪を上げて、終わったらすぐにほどけます。
途中で一度ほどく、というのもおすすめです。夕方に一度ゴムを外して頭皮を指の腹でやさしく動かし、結び直すときは位置を少し変える。それだけで、同じ場所に力がかかり続ける時間を区切ることができます。頭全体が張っているように感じる日は、無理に自分でほぐそうとせず、ヘッドスパのような施術で頭皮をゆるめる時間をつくるのもひとつの方法です。
まとめている時間が長い方ほど、乾かし方も合わせて見直しておきたいところです。根元をしっかり乾かしておくと、髪が立ち上がって分け目やへこみが目立ちにくくなり、結んだあとの形も落ち着きます。反対に根元が生乾きのままだと、結び跡がつきやすく、ほどいたときの見た目も気になりやすくなります。
お仕事や介護などで、どうしても一日中まとめておかなければならない方もいらっしゃいます。その場合は、ほどく時間をつくることよりも、一日の中で結び目の場所を移すことを優先してみてください。午前は低めのひとつ結びにして、午後はクリップで留め直す。それだけでも、同じ一点に力がかかり続ける時間を半分に区切れます。帰宅後におろせる時間が短い方は、入浴の前にほどいてしまい、乾かすときに根元を指の腹で持ち上げるようにすると、結び跡がついた髪の形も戻りやすくなります。無理に一日じゅうおろす必要はなく、区切りをつくることが目的だと考えていただければ十分です。

今日から変えられる、結び方のひと工夫
毎日髪を結ぶこと自体は、少しも悪いことではありません。気にかけていただきたいのは、同じ位置に力をかけ続けないことと、髪を休ませる時間をつくることの2つです。結ぶ位置を数センチずらす、指が一本入るゆるさにする、家ではほどく、乾かしてから結ぶ。どれもささやかですが、毎日のことだからこそ積み重なって効いてきます。
生え際や分け目、結び目の高さの変化は、年齢のせいと片づけてしまいがちですが、日々の習慣で和らげられる部分も確かにあります。気になり始めた場所と時期を思い出せる範囲で整理しておくと、相談の場でも話が早くなります。これまでの髪の悩みやカラーの履歴とあわせて美容師に伝えていただければ、今の髪に合うまとめ方や、通う間隔の目安をご一緒に考えられます。長くつき合っていく髪だからこそ、力を抜けるところは抜いていきましょう。
大事なポイント
- Q.髪を結ぶことは、髪や頭皮にとってよくないのでしょうか?
- A.結ぶこと自体を避ける必要はありません。気をつけたいのは、同じ位置で強く結び続けることと、長い時間ほどかないままでいることです。結び目の位置を日によって数センチずらし、家にいる間は一度ほどいて休ませる時間をつくると、力が一点に集まりにくくなります。まとめること自体をやめるより、続け方を整えるほうが現実的です。
- Q.結んでいたあたりで髪が切れているように見えます。どう考えればよいですか?
- A.結び目の高さでは、引っぱる力とゴムのこすれが重なりやすく、その位置で髪が傷みやすくなります。濡れたまま結んでいないか、ゴムがきつすぎないかをまず見直してみてください。切れ方の様子で原因が絞れることもありますので、気になるときは美容師にその部分を見てもらうとよいでしょう。
- Q.生え際の髪が細く見えるのは、結び方と関係がありますか?
- A.生え際は引っぱる力がかかりやすい場所なので、強く結ぶ習慣が続くと負担が集まりやすい部分ではあります。ただし40〜60代は髪質そのものが変わる時期でもあり、原因はひとつとは限りません。自己判断で決めつけず、気になる状態が続く場合は美容師に相談し、必要に応じて医療機関で診てもらうことも考えてみてください。
- Q.寝るときも髪は結んだほうがよいですか?
- A.長さがある方は、ゆるく束ねておくと寝返りでの絡まりやこすれを抑えやすくなります。ただし日中と同じ強さで結ぶと負担が続いてしまうので、やわらかい素材のもので、指が入るくらいのゆるさにしておくとよいでしょう。位置も日中より低めにしておくと、枕に当たりにくく休みやすくなります。
- Q.白髪染めをしている髪でも、結び方は変えたほうがよいですか?
- A.カラーを重ねている髪は水分が抜けやすく、引っぱる力やこすれの影響を受けやすい状態にあります。染めた直後の数日はとくに、きつく結ばずゆるめにまとめておくと安心です。結ぶ位置や道具の見直しは、色持ちのためというより髪そのものを守るための工夫として取り入れてみてください。
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