朝、鏡の前に立つと、襟足が外にはねていたり、片側だけぺたんとつぶれていたりして、ため息が出ることはありませんか。若い頃は水で軽く濡らせば直っていたのに、最近はブラシでとかしても、スプレーをしても、しばらくするとまた元の形に戻ってしまう。そんなお悩みを、40〜60代の方からよく伺います。

出かける時間は決まっているのに、寝ぐせと格闘しているうちに朝の時間がどんどん過ぎていく。帽子やヘアアクセサリーでごまかす日が増えた、という方もいらっしゃるかもしれません。寝ぐせは、髪の性質と年齢による変化が重なって起きているものなので、仕組みを知ると直し方の順番が見えてきます。この記事では、寝ぐせがつく理由と、朝に根元から整える直し方、前の晩にできる工夫を、美容師の視点から整理してお伝えします。

寝ぐせは表面ではなく根元から直すと落ち着きやすい

最初にお伝えしたいのは、寝ぐせは「はねている毛先」ではなく「クセがついた根元」から直すと落ち着きやすい、ということです。寝ぐせの多くは、寝ている間に枕に押されたり、寝返りで同じ方向に引っぱられたりした形が、髪の内側でそのまま固定されたものです。表面の毛先だけを濡らしてとかしても、根元の向きが変わっていなければ、乾いたときにまた同じ形に戻りやすくなります。

髪の中には、水に濡れるとほどけて、乾くときにその形のまま結び直される性質を持つつながりがあります。寝ぐせはこの性質によってつくもので、裏を返せば、根元まで一度湿らせて、ほどけた状態から整えたい向きに乾かし直せば、形を付け直すことができます。つまり朝の寝ぐせ直しは「濡らす・向きを決めて乾かす・冷まして固定する」という順番で考えるとうまくいきやすいのです。

40〜60代になると髪の太さやハリ、うるおいの量が変わってくるため、若い頃と同じやり方では直りにくく感じることがあります。まずは寝ぐせがつきやすくなる背景を知っておくと、自分の髪に合った直し方を選びやすくなります。

髪の寝ぐせを根元から直す3ステップ|朝、はねたりつぶれたりした髪の寝ぐせを根元から整える手順

40〜60代で寝ぐせが直りにくくなる理由

年齢とともに寝ぐせが気になりやすくなる理由のひとつは、髪のうねりやクセが出やすくなることです。髪の内側のバランスが少しずつ変わることで、若い頃はまっすぐだった方でも、うねりや広がりを感じるようになることがあります。もともとクセのある髪は、寝ている間についた形とクセが重なって、より複雑なはね方になりやすくなります。

もうひとつは、髪が細くなったりハリやコシが弱くなったりすることです。一本一本が細く柔らかくなると、枕に押された形がつきやすく、根元が立ち上がりにくくなります。トップや後頭部がぺたんとつぶれる寝ぐせは、この影響を受けやすい代表的な例です。反対に、髪が乾燥してパサついていると、毛先が外にはねたり、表面がふくらんだりしやすくなります。

白髪が増えてきたことも関係している場合があります。白髪はほかの髪に比べて硬さやクセを感じやすいことがあり、生え際や分け目の白髪だけがぴょんと立って見える、というお声もよく伺います。白髪染めやパーマを繰り返してきた髪は、毛先が乾燥しやすく、寝ぐせの形がつきやすくなっていることもあります。こうした変化はどれも自然なものなので、髪の状態に合わせて直し方を少し変えていくことが大切です。

季節によって寝ぐせのつき方が変わると感じる方もいます。湿気の多い時期はうねりや広がりが出やすく、空気が乾燥してくる秋から冬にかけては、毛先のはねや静電気によるふくらみが気になりやすくなります。暖房の効いた部屋で休むと、寝ている間に髪の水分が奪われやすいこともあります。同じ直し方で落ち着く日と落ち着かない日があるのは、こうした環境の違いも影響しているためです。うまくいかない日があっても、髪や季節の状態に合わせて水分の量や乾かし方を少し調整すればよい、と気楽に考えてみてください。

寝ぐせの種類別・朝の直し方

寝ぐせにはいくつかの型があり、それぞれ直し方のポイントが少しずつ違います。どの型でも共通する基本は、気になる部分の根元まで水やミストでしっかり湿らせることです。霧吹きで表面に吹きかけるだけでは、根元まで届いていないことがよくあります。手ぐしで髪をかき分けながら、根元に直接水分を届けるイメージで湿らせてください。水だけでも構いませんが、パサつきが気になる方は寝ぐせ直し用のウォーターを使うと、なじみやすくうるおいも補いやすくなります。

襟足や毛先が外にはねる寝ぐせは、はねている毛束をたどって根元まで湿らせ、ドライヤーの風を上から下に向けて当てながら、毛先を内側に軽く引っぱるように乾かします。ブラシを使う場合は、毛先を内側に包み込むように添えるとまとまりやすくなります。

トップや後頭部がつぶれる寝ぐせは、根元を湿らせたあと、つぶれている向きとは反対方向に髪を持ち上げながら根元に風を当てるのがコツです。分け目をいつもと少しずらして乾かすと、根元がふんわり立ち上がりやすくなります。

うねりや広がりが出ている寝ぐせは、広い範囲がクセづいていることが多いので、気になる部分全体を湿らせてから、手ぐしで軽く引っぱりながら上から下に風を当てていきます。前髪や顔まわりの割れは、根元を左右に振るように乾かしてから、整えたい方向に流すと落ち着きやすくなります。

どの型でも、形が整ったら最後に冷風を当てて冷ますことを忘れないでください。髪は温かいうちはまだ形が動きやすく、冷めるときに形が固定されやすいため、冷風のひと手間で持ちが変わります。仕上げに洗い流さないトリートメントを毛先に少量なじませると、日中の乾燥や広がりを感じにくくなります。ドライヤーの熱は同じ場所に当て続けず、髪から少し離して動かしながら使いましょう。

時間のない朝に、どこから手をつけるか

忙しい朝は、頭全体の寝ぐせを完璧に直そうとすると時間が足りなくなりがちです。そんなときは、人から見えやすい場所を優先して整えると、短い時間でも印象が変わりやすくなります。優先したいのは、顔まわりと前髪、分け目、そしてトップの順です。正面から見たときに目に入る部分が落ち着いていると、全体がきちんと整って見えやすくなります。

後頭部や襟足は自分では見えにくいため、つい後回しになりがちですが、合わせ鏡やスマートフォンのカメラで一度確認しておくと安心です。はねが気になる場合は、その部分だけを湿らせて内側に向けて乾かし、冷風で冷ますだけでも十分に目立ちにくくなります。

どうしても時間がない朝は、スタイリング剤を上手に使うのもひとつの方法です。クリームやバームを手のひらによく伸ばしてから、はねている毛先を包み込むようになじませると、表面のまとまりを保ちやすくなります。ただし、つけすぎると重たく見えたり、根元がつぶれて見えたりするため、少量から試してください。スタイリング剤は形を保つためのもので、根元のクセそのものを直すものではないので、時間がある日は根元から乾かし直すことを基本にしておくとよいでしょう。

朝の髪に時間をかけられない日が続く方は、前の晩のうちに朝の準備を少し前倒ししておくと、気持ちにも余裕が生まれます。寝ぐせ直しのウォーターやブラシを洗面台のすぐ手の届く場所に置いておくだけでも、朝の動きがぐっとスムーズになります。

前の晩にできる、寝ぐせをつきにくくする工夫

朝の手間を減らすには、前の晩の過ごし方を見直すことも近道です。いちばん大きいのは、髪を根元までしっかり乾かしてから休むことです。根元が湿ったまま横になると、枕に押された形がそのまま乾いて固定され、朝には強い寝ぐせになりやすくなります。乾かすときは根元から始め、全体が乾いたら冷風で表面を整えておくと、寝ている間の形崩れも起きにくくなります。

寝る姿勢も寝ぐせに関わっています。いつも同じ向きで横になる方は、下になる側の髪だけがつぶれたり、はねたりしやすくなります。寝る姿勢を無理に変える必要はありませんが、どちら側に寝ぐせがつきやすいかを知っておくと、朝に優先して直す場所がわかり、時間の使い方が楽になります。

枕カバーの素材も見直してみる価値があります。表面がざらついた素材は髪との摩擦が大きく、寝返りのたびに髪が引っぱられてはねやすくなります。シルクやサテンのようななめらかな素材のカバーは摩擦を抑えやすく、寝ぐせや毛先のパサつきが気になる方に取り入れやすい工夫です。

髪が長めの方は、寝る前に髪を軽くまとめておくのもひとつの方法です。ただし、きつく結ぶと結び目の跡がついたり、根元や頭皮に負担がかかったりするため、ゆるく一つにまとめる程度にとどめてください。夜のうちに洗い流さないトリートメントでうるおいを補っておくと、朝の乾燥によるはねも抑えやすくなります。夜のヘアケアの基本については、寝ている間の乾燥とパサつきをテーマにした記事もあわせて参考にしてみてください。

美容室で相談すると変えやすいこと

毎朝同じ場所に寝ぐせがつく場合は、髪型そのものが寝ぐせを目立たせやすい形になっていることもあります。たとえば、襟足がちょうど肩に当たる長さだと、首の動きで毛先が外にはねやすくなります。つむじや生え際の生えぐせに逆らう方向に分け目をつくっている場合も、根元が立ち上がって割れやすくなります。

美容室では、毎朝どこがどのようにはねるのか、朝のスタイリングにどのくらい時間をかけられるのかを伝えていただくと、長さや量の調整、分け目の位置などを状態に合わせて提案しやすくなります。髪の量を減らしすぎると、かえって表面が広がったりはねたりしやすくなることもあるため、「軽くしたい」だけでなく「朝まとまりやすくしたい」と目的まで伝えるのがおすすめです。

白髪染めやパーマを続けている方は、毛先の乾燥が寝ぐせのつきやすさに影響していることもあります。薬剤の選び方やトリートメントの取り入れ方も含めて相談して選ぶと、毎朝の扱いやすさが変わってくることがあります。寝ぐせは小さな悩みに見えても、毎日のことだからこそ、ひと言伝えておく価値があります。

カットのあとに、ご自宅での乾かし方やブラシの当て方を教えてもらうのもおすすめです。同じ髪型でも、根元の乾かす向きが少し違うだけで、翌朝の扱いやすさが変わることがあります。美容室で仕上げてもらったときの手順を覚えておくと、ご自宅でも再現しやすくなります。

髪の寝ぐせをつきにくくする前夜の3つの工夫|寝る前のひと手間で、翌朝の髪の寝ぐせを減らしやすくする工夫

明日の朝から試せる、根元を意識した寝ぐせケア

寝ぐせは、寝ている間についた根元の形がそのまま固定されたものです。表面の毛先だけを直そうとせず、根元まで湿らせてから整えたい向きに乾かし、最後に冷風で冷ますという順番を意識するだけでも、朝の髪は落ち着きやすくなります。40〜60代の髪はうねりや細さ、乾燥といった変化が重なりやすいため、若い頃と同じやり方で直らなくなるのは自然なことです。

あわせて、前の晩に根元まで乾かしてから休む、摩擦の少ない枕カバーを選ぶといった小さな工夫を取り入れると、朝の手間は少しずつ減らしやすくなります。それでも毎朝同じ場所の寝ぐせに悩んでいる方は、髪型や長さ、毛先の状態も含めて、気になる方は美容師に相談してみてください。